前回の記事で、断食のことを書いて思い出しました。
断食をしようと思ったのは、大いなる好奇心からでした。
食を断つということは通常はないことです。
稀なる機会ですし、その時に自分はどんな心理状態と身体状態になるのか・・・、
知りたかったのです。
それから、大きな目的の一つに禁煙がありました。
大学時代からのヘビースモーカーで、喫煙歴は15年ほどになっていました。
ヨーガを始めても禁煙は出来なくて、でも呼吸法をしていることが無駄になっているようで、
これを機に禁煙を決意したのです。
それ以前も禁煙を試みたことはあるのですが、とても難しいことでした。
ニコチン中毒というのはあるのだな~、というのが実感です。
タバコを長時間やめると、なぜか気持ちが暗くなるのです。
この世が終わってしまうのではないか、と思うほど。
恐ろしいことですが、これは脳がニコチンを欲しっているのか、
それともわたしの意識の中にタバコをやめると都合の悪いことがあるのか。
そんなことを考えつつも、やめることが出来ないでいました。
断食で禁煙をした方の体験談が、
断食をすることにしたヨーガ教室の先生が書かれた本の中に載っていたのです。
それで、断食前の先生との個人面談の時に禁煙をしたいことを話しました。
断食は、体内の毒素を出す浄化行為です。
食にまつわるその人それぞれの習慣や、食以外の思考や嗜好をも変えることが出来るのです。
通って出来る7日断食が始まりました。
1日目。
ヨーガ教室に通って行う断食は月曜日から始まります。
前回の記事に書いたように、前日は家での食事も少な目に摂ります。
月曜日の一日の食事は、レトルトの玄米がゆ1パックを3回に分けて食べるのです。
低血糖にならないように甘い特別なジュースを少し飲む以外は、
水かカフェインレスのお茶を飲むだけです。
時々塩もなめておかないと、体内の塩分が減って、貧血状態になります。
初めての減食でしたが、食に対する欲望はほとんどありませんでした。
しかし、恐ろしいことにニコチンは欲していて、この朝1本のタバコをすってしまいました。
自己嫌悪・・・。
教室に行って先生にそのことを告げると、先生はちょっとプレッシャーをかけてくれました。
断食参加者の方々にに、わたしが禁煙を目的としていることと、
毎日わたしに会ったら、禁煙しているかどうか尋ねるようにと言ったのです。
これは効き目がありました。
それでも、ニコチンの誘惑は強いものでした。
ご飯は食べずにいられるのに、なぜ?
断食が始まると、通える限り毎日教室に行き、
消化器官の停滞が起こらないような運動とヨーガ・アーサナとを行い、
先生に体調を報告し、参加者の方たちとミーティングを行います。
3日目頃のことでした。
教室から帰宅して部屋に行き、いつもならここでタバコを一服するところですが我慢です。
口寂しく、ボールペンを咥えてみました。
そして気がついたのです、ボールペンを咥えながら深呼吸をしていることに。
わたしがタバコをすいたかったのは、深い一息をしたかったのです。
吸って!吐く!
タバコと言う道具を使って、ただ深呼吸をしたかったのだと理解しました。
それからもう一つ気がついたことは、行動パターンについてです。
帰宅して自分の部屋に入ると、座る位置が決まっています。
そこに座ってまずすることが、喫煙。
その行動を変えたら、禁煙は出来るのだと分かりました。
ヨーガの先生から伺ったのは、喫煙とコーヒーがセットになっているとか、
お茶を飲み甘いお菓子を食べることと喫煙が一緒になっているということです。
つまり生活習慣とは、食べ物の嗜好以外に、
行動や行為の組み合わせが伴っていることをこの断食中に知ったのです。
確かに、コーヒーも一日に4~6杯は飲んでいました。
そのコーヒーは、断食後体質に合わなくなったのか、ほとんど飲まなくなりました。
一緒に食べていた甘いお菓子も食べなくなりました。
断食を始めて、呼吸をするときに楽になっていることにも気がついていました。
喫煙していたとき、いつも口が半開きの呼吸をしていたのですが、
口を閉じて鼻呼吸が楽に出来るようになっていたのです。
胸もとても楽になって気持ちがとても良いのです。
その爽快感。
これを感じたら、もう一度喫煙したいとは思いませんでした。
喫煙をしたくなるのは、その習慣の上に出来上がった体(ニコチン中毒)と心(精神的ニコチン中毒)です。
食習慣も似ているのではないでしょうか。
そして、食を断つという行為は、食事を摂るという習慣を断つことです。
時間が来たら、何食目かの食事をする。
午後3時頃になるとおやつを食べる。
仕事が終わって夜がくるとお酒を飲む。
そのような口から摂取する行為は、無意識に習慣化していることが多いものです。
本当にお腹が空いているのか、その食物を心から食べたいのか、
自分に問うことなく食べていることが、習慣になっているようです。
潜在印象=サムスカーラとは、過去に行った行為の印象が、
今の自分の行為を創っていることを言います。
過去の行動や行為は膨大な量ですが、
それらは全て人の潜在意識に蓄積されると、ヨーガの聖典には書かれています。
その印象が、無意識に現在の行動や行為を決めているのです。
その印象を浄化することがヨーガを成功に導きます。
さて、その断食7日間で目出度く禁煙に成功しました。
再び喫煙したいとは思いませんでした。
1週間前まではプカプカタバコをふかしていたことが嘘のようです。
でも、ニコチンの怖さを実感することが、禁煙後15年目位にあったのです。
時々、喫煙をする夢を何度か見るようになったのです。
目が覚めて喫煙したいとは決して思わないのに、なんだろうと疑問でしたが、
これは麻薬でいうならフラッシュ・バックみたいなこと?でしょうか。
1~2年の間に時々起きたのですが、自然となくなりました。
今年の春、臨床美術の講演会に脳科学者の先生がみえて話されたことですが、
喫煙している人の脳は、MRIを撮ると脳外科医なら誰でもわかるのだそうです。
どのようにか変化しているのでしょう。
どんな風なのか見てみたい気がします。
喫煙をしたことは、心身の健康のみならず、生活そのもを変えました。
喫煙している時間を、他のことに使えるわけです。
ぼんやり煙を吐き出している時間をもっと有効なことに使うことが出来るのです。
火事の心配もなくなりました。
歯もきれいになったし、服を焦がすこともなくなりました。
喫煙することは実にネガティブな思考を生み出すというのが実感ですし、
その行為の奴隷になっていることから解放された喜びは大きいのです。
そう、喫煙者はタバコがないといられないのです、中毒ですから。
タバコが手に入りにくいインドに20代の時に旅行して、とっても不自由を感じました。
それは、つまるところ、身も心もタバコの奴隷になっているということなのです。